江戸表具

岩崎晃

江戸表具は、書画作品の保存・鑑賞のために布や紙などで裏打ちして掛け軸、屏風、額などを仕立てる伝統工芸技術です。「水と刷毛による芸術」とも呼ばれています。材料は、各種の和紙、裂地、水、糊(のり)とシンプルですが、それだけに繊細な紙の扱いや刷毛さばきには永年の修練が必要とされています。中国・唐の時代に生まれたといわれる表具が、日本にもたらされて千年余り、元禄期に多くの職人が大名とともに江戸に移り住んだこと、町人文化が花開き庶民にも身近になったことで生活用式や建築様式の変化、茶道の隆盛とも深く関わりながら独自の技術・文化を経て、今日の形になっています。